起立性調節障害とは
起立性調節障害とは、自律神経の働きが悪くなり、立つ時・立っている時に体、脳への血流が低下する病気です。
具体的には、朝なかなか起きられない、朝食が食べられない(食欲不振)、全身倦怠感、立っていると気分が悪くなる、立ちくらみなどの症状が見られます。またこれらの症状が朝・午前中に強く現れ、午後から軽快し、夜には元気になるという特徴があります。子どもの中でも特に思春期によく見られます。
起立性調節障害の原因は?
主に、自律神経中枢(脳の大脳辺縁系、視床下部など)の機能が悪くなり、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることにあると言われています。
また遺伝的な体質、ストレスなども発症に影響します。
起立性調節障害の症状
お子さんにこのような症状はありませんか?
- 朝起きるのが難しく、午前中元気が出ない
- 食事をする気にならない
- 疲れやすい、だるい
- 立っていると気分不良になり、悪化すると倒れることもある
- めまいやもしくは立ちくらみを感じやすい
- 顔色が良くない
- 頭痛が起きている
- 乗り物酔いを起こしやすい
- お腹の痛み(臍疝痛)が時折起こる
- 少しでも動くと呼吸が苦しい、または胸がドキドキする
お風呂に入っている時、もしくは嫌なことを目にしたり聞いたりすると気分不良になる
上記項目のうち3つ以上該当する場合、もしくは2つ以上だとしても起立性調節障害と判断する可能性があります。
起立性調節障害のタイプ(種類)と診断
別の病気を発症していないことをチェックするため、必要に応じて画像検査や血液検査などを実施します。
起立性調節障害の可能性が高い場合は、新起立試験を実施します。
一般的に血圧は立ったらすぐに低下し、心拍数は立つと増加しますが、直ちに元通りになります。しかし、起立性調節障害の方はこのような調節を適切に行うことができません。起立性調節障害の診断のためには、立つ前と後で脈拍や血圧を測定し、血圧が元に戻る時間を計測します。
新起立試験の実施により、下記4つのサブタイプを判定します。
(1)起立直後性低血圧
(軽症型、重症型)
立ってすぐに強い血圧低下が起こり、かつ血圧の回復にも時間がかかるタイプです。
(2)体位性頻脈症候群
立っても血圧は低下しませんが、心拍数が大きく増加するタイプです。
(3)血管迷走神経性失神
立っていると突然、収縮期・拡張期の血圧が低下し、意識の低下、意識抄出発作(いわゆる失神)が現れるタイプです。
(4)遷延性起立性低血圧
立ってすぐの血圧・心拍は正常ですが、3~10分経過してから、収縮期血圧が横になっている時と比べて15%以上(または20mmHg以上)低くなるタイプです。
起立性調節障害の治し方
診断結果をもとに、疾病教育や生活習慣の改善が中心となります。必要な場合に、薬物療法や環境調整、心理療法などを行うこともあります。
疾病教育
お子さん、保護者さんに対して、起立性調節障害という病気について詳しく説明を行います。
お子さんと保護者さん、また周りの人が身体の疾患であり精神的な問題や根性で治るものではないことを認識することが大切です。起立性調節障害を正しく理解することで、現状の不安も軽減することができます。
生活習慣の改善
血液量を増やすため、十分に水分を摂取します。栄養バランスの整った食事を摂ることも大切です。
適度な運動は、神経調節能力を改善させます。また起立性調節障害では、夜に元気になり、夜更かしをしてしまうケースが少なくありません。運動で適度な疲労を感じることで、睡眠の改善にもつながります。
また質、量とも十分な睡眠が必要です。寝る前のスマホの使用、テレビ、ゲームなどはできる限り避けましょう。
薬物療法
必要に応じて、血圧を上げる薬、体質を改善するための漢方薬などを処方いたします。
環境調整・心理療法
必要に応じて、学校側の十分な理解・適切な対応のため、環境調整を行います。また、お子さんのストレス対処能力を向上させるため、心理療法を行うこともあります。
当院は臨床心理士が在籍しておりますので、お子さんの状態に合わせて最大限サポートさせて頂きます。
起立性調節障害Q&A
起立性調節障害の初期症状はありますか?
初期症状かつ典型的な症状・傾向として、以下の3つが挙げられます。お気軽に当院にご相談ください。
- 朝の全校集会などで立っていると気分が悪くなる、倒れる
- 頭痛、腹痛などの体調不良が出る日がある
- 症状は、朝・午前中に強く現れ、午後になると徐々に軽快する
日常生活で気をつけることはありますか?
主な注意点をご紹介します。
- 横になった状態・座った状態から急に立ち上がらないようにしましょう。30秒以上の時間をかけ、ゆっくりと立ち上がりましょう。
- 朝、ベッドから出てからしばらくは、頭を下げて歩くようにしましょう。頭を上げると、脳への血流が低下し、気分が悪くなる場合があります。また一度症状が出てしまうと、頭を下げてもなかなか良くなりません。
- 日中は、体のだるさがあっても基本的には横にならないようにしましょう。
- 水分摂取(1.5~2L/日)、塩分摂取を心がけましょう。
- 血圧の調節を適切にするために定期的な運動も大切です。
親ができることはありますか?
病気・症状について理解してあげること、常に味方でいてあげることが大切です。
保護者さんとしても、不安や焦りがおありかと思いますが、お子さんも辛い想いをしています。無理矢理起こすということはせず、根気よく声をかけ、必要に応じて身体を支える・手を取るなどのサポートをしてあげてください。
起立性調節障害のお子さんは、友人や教師からの悪気のない言葉・態度で傷ついていることが少なくありません。「お母さん・お父さんだけは何があっても味方でいてくれる」という安心感が、治療を行っていく上でも大切になります。
病気や症状、お子さんとの接し方については、当院からしっかりと説明させていただきます。どうぞ、安心してご相談ください。